特徴
コウモリ目は翼をもち、完全な飛行ができる種類である。多くの鳥類と同様、はばたくことによって飛行するが、鳥類の翼と異なり、コウモリの翼は飛膜と呼ばれる伸縮性のある膜でできている。
哺乳類では他にムササビなどが飛膜を広げて滑空するものの、完全な飛行をするのは哺乳類中でもコウモリ目のみ。
コウモリの前足は、親指が普通の指の形で鉤爪あることをのぞけば、すべて細長く伸びている。飛膜はその人差し指以降の指の間から、後ろ足の足首までを結んでいる。腕と指を伸ばせば翼となって広がり、腕と指を曲げればこれを折りたたむことができる。さらに後ろ足と尾の間にも飛膜を持つものも多い。
また、鳥と異なり、後ろ足は弱く、立つことができない。休息時は後ろ足でぶら下がる。前足の親指は爪があって、排泄時など、この指でぶら下がることもできる。また、場合によってはこの指と後ろ足で這い回ることができる。
一般にコウモリといえば西洋では吸血鬼につながるイメージがあるが、実際には他の動物の血を吸う種(チスイコウモリ)はごくわずかであり、たいていは植物(主に果実)や虫を食べる。東洋では歴史的にコウモリを嫌忌する伝統はない。むしろ中国語で「蝙蝠」の音が「偏福(福が偏って来る)」に通じるため、幸運の象徴とされている。
ショウコウモリは超音波を用いたエコーロケーション(反響定位)を行うことでよく知られている。種によって異なるが主に3万~10万ヘルツの高周波を出しその精度はかなり高く、ウオクイコウモリのように微細な水面の振動を感知し、水中の魚を捕らえるものまでいる。コウモリの存在する地域における夜行性の昆虫やカエルなどはエコーロケーション対策となる器官や習性を持つものも多く、その生態系ニッチの大きさが伺える。
竹ざおの先に鳥もちを付けてそれに振って、コウモリをおびき寄せ接着させ捕獲することができる。しかしコウモリは、狂犬病のウィルスを持っている可能性がある(なお、日本では1956年以降の狂犬病の発症例はない)ので、特に日本以外で子供などが安易に遊びで捕らえるのは避けたほうが良い。
熱帯においては、花の蜜や花粉を食べる種があるため、それに対する適応として、花粉の媒介をコウモリに期待する、コウモリ媒の花がある。
分類
位置づけ
古代ローマの博物学者であるプリニウスは、コウモリのことを「翼をもったネズミ」と呼び、鳥類に分類していた。江戸時代、小野蘭山の『本草綱目啓蒙』でも、「かはほり」(コウモリ)はムササビと共に鳥類に分類されている。
近代分類学では哺乳類に分類されたが、当初は、霊長目(サル目)などと共に主獣類として分類されていた。
1990年代からの分子系統の研究により、コウモリ目は食肉目(ネコ目)、鯨偶蹄目、奇蹄目(ウマ目)などと共に、ローラシア獣上目の系統に属することが明らかになった。なお、主獣類は多系統だったもののコウモリを除けば単系統であり、真主獣類として現在も認められている。
2006年、東京工業大学のグループによる研究(レトロポゾンの挿入の分析)によって、コウモリはローラシア獣の中でも奇蹄目・食肉目に近縁であることが明らかにされている(Nishihara et al., 2006)。ウマと翼を持つコウモリが含まれることから、ギリシャ神話の有翼馬であるペガサスにちなんだ Pegasoferae がこの系統の名称として提案されている。
オオコウモリとココウモリ
伝統的に、コウモリ目はオオコウモリ亜目(大翼手亜目、オオコウモリ)とコウモリ亜目(小翼手目、ココウモリ)に分けられてきた。
オオコウモリはその名のとおり大型のコウモリの仲間で、オオコウモリ科の1科のみが属する。中には翼を広げた幅が2mに達する種もある。よく発達した視覚によって、植物性の食物を探す。果実を好み、農業従事者からは害獣として扱われる場合もある。 オオコウモリのほとんどの種はエコーロケーションを行わない[1]。
ココウモリは小型のコウモリの仲間で、17科が属し、多くの種に分かれている。多くが食虫性であるが、植物食、肉食、血液食など、さまざまな食性の種がいる。コウモリ亜目の特徴は、エコーロケーション(エコロケーション、反響定位)をすることである。超音波を発し、その反響を検知することで、飛行中に障害物を避けたり、獲物である昆虫等を見つけたりすることができる。
オオコウモリとココウモリには、翼をもつという共通点があるが、それを除けばあまりにも多くの違いがあるため、別々の祖先から進化し、独立に飛行能力を獲得したのではないかという説もあった。 しかし、最近のミトコンドリアDNA配列の解析により、オオコウモリとココウモリは系統的にも近縁であることが明らかになっており、どちらも飛行能力を初めて獲得した共通の祖先から進化したものと考えられている。
また、2000年になって、分子系統により、コウモリ亜目は側系統であり、コウモリ亜目の一部はオオコウモリに近縁であることがわかった。 その系統に基づき、コウモリ目は Yangochiroptera 亜目と Yinpterochiroptera 亜目に分類しなおすことが提案されている。 Yangochiroptera 亜目はココウモリの一部、Yinpterochiroptera 亜目はココウモリの残りとオオコウモリを含むものである[2]。
科とおもな種
以下は上述の新しい分類にもとづくものである。
コウモリ(種不明)
* †オニコニクテリス科 Onychonycteridae(†は絶滅)
* †アルカイオニクテリス科 rchaeonycteridae
* Yinpterochiroptera
o アラコウモリ科 Megadermatidae
+ アラコウモリ - 全長7〜9cm。東アフリカ、東南アジアに生息。
o オオコウモリ科 Pteropodidae - 伝統分類ではこれのみオオコウモリ亜目、他は全てコウモリ亜目
+ グアムオオコウモリ(絶滅)
+ ルーセットオオコウモリ - 全長約25cm。熟した果実や花の蜜、花粉などを食べる。夜は洞窟の中で休む。
+ インドオオコウモリ - 全長約20.5cm。インドに生息。
+ ハイガシラオオコウモリ(Pteropus poliocephalus)
+ ロドリゲスオオコウモリ(Pteropus rodricensis)
+ #日本のコウモリも参照。
o オナガコウモリ科 Rhinopomatidae
o カグラコウモリ科 Hipposideridae - キクガシラコウモリ科に含めることもある
+ #日本のコウモリ参照。
o キクガシラコウモリ科 Rhinolophidae
+ #日本のコウモリ参照。
o ブタバナコウモリ科 Craseonycteridae
* Yangochiroptera
o アシナガコウモリ科 Natalidae
o ウオクイコウモリ科 Noctilionidae
+ ウオクイコウモリ - 全長12〜15cm。中央・南アメリカに生息。
o オヒキコウモリ科 Molossidae
+ #日本のコウモリ参照。
o クチビルコウモリ科 Mormoopidae
o サシオコウモリ科 Emballonuridae
o サバクコウモリ科 Antrozoidae
o サラモチコウモリ科 Myzopodidae
o スイツキコウモリ科 Thyropteridae
o ツギホコウモリ科 Mystacinidae
o ツメナシコウモリ科 Furipteridae
o ヒナコウモリ科 Vespertilionidae
+ #日本のコウモリ参照。
o ヘラコウモリ科 Phyllostomidae
+ チスイコウモリ - 全長7.5〜9cm。中央・南アメリカの平野部に生息。
+ シタナガヤリビヨウコウモリ - 全長5.5〜7.2cm。中央・南アメリカに生息。
o ミゾコウモリ科 Nycteridae
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』